2014年9月28日日曜日

狂犬病のこと (9月28日世界狂犬病デー)


毎年9月28日は『世界狂犬病デー』ということで、今日はアニコムグループ主催の狂犬病セミナーに行ってきました。


9月28日は狂犬病ワクチンを開発したルイ・パスツール氏の命日ということで、世界中の狂犬病の研究者たちによって構成されているGlobal Alliance for Rabies Controlが、たくさんの人たちに『人やその他の動物における狂犬病の影響やその予防法などを知ってもらう』ことを目的として、2006年に世界狂犬病デーを制定しました。
そして、2007年以降は、9月28日に世界中の多くの国々で狂犬病に関するイベントが開催されるようになって、狂犬病の教育活動、犬への狂犬病予防接種等の取り組みが実施されています。


ウチはエマのペット保険をアニコムで加入している関係もあって、以前からこの狂犬病セミナーが開催されているということは知っていました。
無料で受講できる一般の飼い主にもわかりやすい狂犬病セミナーであるという事も知っていたのですが、僕自身が狂犬病に対して、「日本ではもう50年以上、国内での感染による狂犬病の発症はないから、そんなに心配する必要はないだろう」という考えを持っていたので、このセミナーに脚を運ぶことは過去に一度もありませんでした。

でも、ドッグ・トレーナーを目指すようになってからは、「常に犬と触れ合う仕事をしていく以上は、狂犬病に対する正しい知識を持って、それを飼い主さんに伝えていくことも大切」と、狂犬病に対する意識や考え方が徐々に変化し始めました。
もし飼い主さんに狂犬病のことを聞かれて、「今の日本にはない病気だから、心配しなくてもだいじょうぶですよ」という回答しかできないのでは、あまりにももったいない…そう思うようになったのです。
そして、他の重篤な感染病と同様に、日本で狂犬病が発生する日が来るかもしれません。
この先、そんな事態が起きた場合にも、正しい知識を得ておけば狂犬病の蔓延を少しでも食い止めることができるのではないかと思うのです。
そんな訳で、狂犬病に対する自分なりの答えを見つけるために、今回初めてこのセミナーに参加して、狂犬病について勉強させてもらってきました。

『狂犬病はすべての哺乳動物が感染する発症すると致死率100%のとても怖い病気』ということは多くの人たちに知られていますが、実はあまり知られていなかったり誤認識されていることもたくさんあります。
僕もこのセミナーで初めて知ったこともたくさんありました。


2014年現在、狂犬病が発生していない狂犬病清浄地域は、日本を含めて7つの地域しかありません。


アイスランド、オーストラリア、ニュージーランド、フィジー諸島、ハワイ、グアム、そして日本。
この7つの地域以外の国では、何かしらの形で狂犬病が発生しています。

2013年までは台湾も狂犬病清浄国の一つでしたが、300頭以上の野生のイタチアナグマと1頭の犬が狂犬病と診断されたため、狂犬病清浄国から除外されました。
台湾のイタチアナグマの狂犬病は突然発生したような伝え方をされることが多いのですが、研究者の間では、実は100年以上前から野生のイタチアナグマの間では狂犬病があったのではないか…と言われているそうです。

過去に狂犬病が発生していた日本でも、もしかすると同じような事象が発生しているかもしれません。
非常に怖い話ではあるのですが、2013年に台湾で発生した狂犬病については、人への感染は1件もなかったということなので、狂犬病を媒介する鋭い犬歯を持つ野生動物との接触を避けるようにすれば、この病気への感染は避けることができるようです。


ただ、世界中では毎年約55,000の人が狂犬病の発症によって亡くなっています。
そして、その内の約30,000人がアジアでの感染だそうです。
日本国内にいる限りはほぼ感染の心配はない狂犬病も、海外、特にアジアの国々で無闇に動物と触れ合うことによって感染のリスクが高まります。
街中や観光地をカラーも着けずに単独で歩いている犬は野犬である可能性が高く、そういった犬はほぼ間違いなく狂犬病のワクチン接種は受けていません。
そのような犬に『かぷっ』っと行かれてしまった場合、日本国内ならすぐに病院へ…となりますが、勝手のわからない海外でそのようなことが起きると、訳がわからなくなってパニックに陥る人も少なくないのではないかと思います。
海外では矢鱈と動物には近づかないことが大切ですが、それでも何かの間違いで咬まれてしまった場合は、旅行前の事前準備を含めて以下の対応が有効とのことです。

1.流水+石鹸で傷口を洗い流す
狂犬病は怖い病気ですが、狂犬病のウイルス自体は消毒に非常に弱いものなので、傷口を石鹸で洗うことによって、感染を防ぐことができる場合もあるそうです。

2.日本大使館へ連絡して指示を仰ぐ
困ったときの大使館ということで、咬まれたらすぐに大使館に連絡を入れて、治療を受けることのできる医療機関等を紹介してもらいます。
が、大使館が休日の場合もあるので…

3.旅行会社に連絡をして指示を仰ぐ
旅行会社に連絡をして、日本語の通じる医療機関等を紹介してもらいます。
が、旅行会社のツアーによる旅行でない場合は…

4.旅行前に治療を受けられる医療機関を調べておく

狂犬病は発症してしまうとほぼ100%死亡してしまう感染症ですが、狂犬病を疑われる動物に咬まれたとしても、暴露後ワクチンという方法で治療を受ければ発症することはありません。
命も助かります。
なので、海外で犬に咬まれた場合に備えて、すぐに治療を受けられる病院を事前に調べておくといざという時に安心です。
ただし、咬んだ犬が狂犬病ウイルスに感染しているかどうかは、潜伏期間中は検出することができないので、検査だけで簡単に感染の有無を判断することはできないという問題もあります。
(発症の直前、ウイルスが脳に到達すると、唾液からウイルスが排出されるようになるそうです)

いずれにせよ、海外では素性のわからない犬に無闇に近寄ったり触れたりしないことが大切です。
また、キツネ、コウモリ等の野生動物についても、同様の対応が必要になります。


現在、日本には狂犬病はないと言われています。
それは安心で喜ばしいことではありますが、それによって犬に接する人間側に油断、慢心があるような気がします。
日常的に「犬が噛んだ」「犬に咬まれた」という話をよく聞きますが、そのような事故が起きた場合、本来は保健所に必ず届け出をしなければならないという条例、政令が定められています。
ただ、実際にはそのような事故が起きても、届け出が行われるケースは少ないと思います。
狂犬病がない今の日本であれば、それで許されるのかもしれません。

でも、日本で狂犬病が発生したら…

狂犬病に関するルールの施行は、間違いなく厳格化されることになると思います。
咬んだ犬、咬まれた犬はルールに則って抑留されることになり、狂犬病予防接種を受けていない犬は解剖検査をされたり安楽死させられたり…という世の中になることも考えられます。

今回のセミナーで講師をされたある先生がこのようなことを仰っていました。

「何かが起きたときには、人間の命を優先せざるを得なくなります」

狂犬病の研究は専門家の先生方にお任せするしかありません。
でも、犬の命を守るのは飼い主の仕事です。
狂犬病予防接種にも賛否両論あるかと思いますが、何かが起きたときに後悔する事がないように、狂犬病に対する正しい知識を得て、十分な対策を取っておくことが大切だと思います。
そして、毎年9月28日は、犬に関わるすべての人が、狂犬病について考える日になることを願っています。

そして僕は、狂犬病の感染の原因となる犬の『動物を咬む』という行動をなくしていけるように、犬と楽しんでトレーニングをしていきたいと思います。

来年も同じ日に狂犬病のセミナーが開催されると思いますので、興味がある方は是非参加してみてください。
ちょっとしたワークショップあって、楽しみながら狂犬病について学ぶことができます。


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