2007年7月28日土曜日

Paralysis!

今週の前半くらいから、何だか知らないけど舌に痺れるような感覚があった。
『なんだろう?』と思ったけど、特に他の症状は出なかったから普通に生活していた。
が、木曜日の昼休み、パソコンに向かっていると、何だか体の左側が軽く痺れているような感覚が。。。
その時は、疲れか何かだろうと思って特に気にしなかった。
が、昼休みの終わりに歯磨きをして口を濯ごうとしたとき、一瞬フリーズしてしまった。
『顔の左側が動かない。。。』大きく口を開けても、口を横に開いても、顔の左側だけうまく動かない。
鏡に向かっていろんな表情を作ってみたけど、顔の左側に力が入らない。
『やばい。。。』
脳梗塞を患っていた義父の病状を思い出した。
『まさか。。。この歳で脳梗塞?』変な汗が出た。
言葉は普通にしゃべれたし、記憶が飛んだり意識が混沌としたりはしていない。
ただ、顔面の麻痺と半身の痺れ、これはただ事ではないと思った。
夕方になってもこの症状は消えなかった。
この日は職場の飲み会があったけど、30分だけ顔を出して帰らせてもらうことにした。
いきなりぶっ倒れたりしたら、シャレにならない。
かみさんに伝えるか黙っておこうか迷ったけど、何か起きたときに大きなショックを受けると思ったので、
『体の左半分がちょっと痺れている。』
とメールで伝えておいた。

家に帰ると、かみさんが病院を探してくれていた。
近所には大きな病院がいくつかあるが、徒歩圏内には夜間に脳の検査をしてくれる病院はなかった。
車で5分ほどのところに夜間も検査可能な病院があったが、この病院、非常に評判が悪い。
実際はどうだか知らないけど、あまり気が進まなかったので病院は翌朝に行くことにした。
普通に歩くことはでるのでエマを散歩に連れて行こうとしたら、かみさんに止められた。
夜の遅い時間だったけど、散歩はかみさんに任せることにした。
ここ最近は義父のことでいろいろ動き回って疲れているかみさんには、とても申し訳ない気分になった。
俺まで脳梗塞になってしまったら。。。
余計なことをいろいろ考えて眠れそうになかったが、その日はいつの間にか眠ってしまったようだった。

翌朝、目を覚ましたときに体の調子を確認してみたが、前日と特に変わりはなかった。
かなり怖いけど、検査を受けてはっきりさせないといけない。
仕事場に電話を入れて一日休むことを伝えて、すぐに近所の埼玉草加病院に向かった。
埼玉草加病院には脳神経外科はないので、まず内科の先生に診察してもらった。
症状を伝えて、診察を受けると、「とにかくCTで見てみましょう。」と言われた。
CTスキャンの検査は初めての経験だ。
CTスキャンでの検査は痛くも痒くもないが、結果がどう出るかが非常に怖い。
検査を終えて、受付前の待合室で待つ。
落ち着かない。
名前を呼ばれたので、診察室へ向かう。
もうビビッていても仕方ないので、勢いつけて診察室に入る。
先生が、CTで撮影したフィルムを見ながらこう言った。
「CTだけでは何とも言えないんですけどね、症状的に脳梗塞の疑いがあります。」
がーん。。。「そうですか。。。」
半分覚悟はしていた。
「ただ、絶対に脳梗塞とは言えないんです。怪しいところがあるということで。」
そして、設備のある病院でMRIの検査を受けることを勧められた。
草加と越谷の市立病院にMRIの設備があるらしいが、時間的に今日の検査はどちらも無理だとのこと。
それ以外の病院ということで、足立の苑田病院と割と実家に近い埼友病院を勧められた。
距離的には苑田病院の方が若干近いが、以前に一度行った事のある埼友病院に行くことにして紹介状を書いてもらった。
受付で精算を待っていると、看護師さんが来て、
「CTの結果を埼友の先生に診てもらってください。」
と言って、CTのフィルムを渡された。
本格的に病人っぽくなってきて、大きく凹む。。。

埼玉草加病院を出たのがちょうど12:00。
埼友病院の午後の診察は15:00からだったので、一度家に帰った。
エマが出迎えてくれる。
昨日から俺の様子がおかしいのをわかっているようで、別の犬のようにおとなしい。
「ごめんな、病院から帰ってきたら散歩に行こうな。」
エマは心配そうに俺の様子を伺っている。
もし、脳梗塞だったら即入院だ。
エマの散歩も行けなくなってしまう。
脳梗塞がどんなに怖い病気なのかは、義父から間接的に教わっている。
本当に怖かったけど、事情がわからないエマはもっと困惑している。
「大丈夫だよ! 病気だったとしてもちゃんと治るから! エマが良い子にしてれば大丈夫だよ。」エマにそう話し掛け、自分にもそう言い聞かせて、いつもと同じようにボール投げをして遊んだ。
なんでもないということを祈りながら。。。
しばらくすると、かみさんから電話が来た。
脳梗塞の疑いがあるということを伝え、何かあったときはそれなりの準備しておいてくれと伝える。
かみさんの声は冷静だったけど、脳梗塞が確定したらかみさんはどう思うか。。。
それが心配だった。
埼友病院にはクルマを使わないと行くことができないので、少し早いと思ったが13:30に家を出た。
体は普通に動くけど、こんな体調と精神状態でまともに運転ができるかどうか自信が持てない。
それに、病院で長時間待たされ続けるのも嫌だった。

20分後には埼友病院に到着。
受付にいた女性に、体の左半分に痺れ、麻痺があることを伝え、埼玉草加病院でもらった紹介状とCTのフィルムを渡した。
「診察は3時からだから、座って待っていてください。」と言われた。
そして、
「でも、気分が悪くなったらいつでも声掛けてくださいね。」
とも言われた。
本当ならうれしい心遣いだけど、自分の症状にはやはり重い病気の可能性があるということを再認識。
更に凹む。。。
もらった受付票の番号は1番だったけど、まだ診察まで時間がだいぶある。
一度病院を出て、近くのセブンイレブンまで行って2万円を下ろして、ミネラルウォーターとバタービスケットを一枚買った。
店を出て、焼け付くような日差しの中でクッキーを無理やりミネラルウォーターで胃に押し込んだ。
これから脳神経外科で診察を受けようとしている俺にしてみたら、この天気の良さと暑さは無駄以外の何物でもない。
外にいてもただただ暑いだけなので、病院に戻って待合室のソファに腰を掛けた。
まだ診察開始まで一時間以上ある。
即入院になったときのことを考えて家から文庫本を4冊持ってきていたので、一時間で読み終わりそうな本を選んで読むことにした。
軽めの内容の本を選んだけど、こんな状況で本を読んでもなかなか頭の中には入ってこない。
同じページを何度も読み返す。。。

一時間の待ち時間はあっという間に経過。
看護師さんに名前を呼ばれて診察室へ。
まず最初に看護師さんに血圧を測ってもらった。
結果を記入した紙を手渡され、「先生に渡してくださいね。」と言われる。
脳神経外科担当の先生はまだ来ていないようだった。
しばらくすると、担当の先生が入ってきた気配があった。
俺が待っていた場所からは、先生の座る席が見えなかった。
ボードにCTのフィルムを差し込んでいる音がした。
俺のCTスキャンの結果を見ているようだった。
名前を呼ばれたので、先生の椅子の前に。
俺よりも若そうな先生だった。
丁寧な自己紹介してくれた。
埼玉草加病院で紹介されたことと、今の自分の体調を先生に伝える。
まず、「両目を強く瞑ってみてください。」とか、「下を真っ直ぐに出してみてください。」とか、埼玉草加病院の先生と同じような診察が始まった。
「うん、確かに顔の左側に力が入らないみたいですね。」と言われる。
自分でも顔の左側の感覚があまりないことが嫌になるほどよくわかる。
すると先生、
「ちょっと握力測ってみましょうか。」と言ってデスクの引き出しの中から握力計を取り出した。
まず右手、普通に握りことができる。
そして痺れている左手、右手の時より握力が強かった。
まぁ、俺は半分左利きだから。。。
「とりあえず握る力はあるみたいですね。」そうです、ここまで普通に運転してきましたから。。。
そして先生、CTのフィルムを見つめて、
「僕が見る限り、脳梗塞ではないと思うです。」えっ!? ほんとに?
「ただ、絶対に脳梗塞でないということを証明しないといけないから、MRIはやっておきましょう。」
CTスキャンに続き、今日二度目の初体験。
でも、もうここまできたらとことん調べてもらってすっきりして帰りたい。
「はい、お願いします。」と二つ返事で答えた。

簡単な問診を受けて、MRIがある別の建物へ移動した。
受付の若い女の子が、更衣室へと案内してくれた。
CTはそのままで検査できたけど、MRIは検査着に着替えないといけないようだ。
着替え終わって更衣室を出ると、すぐ目の前の扉の脇にいた男性が、
「こちらへどうぞ。」と案内してくれた。
扉の中に入ると、テレビでしか見たことがないような金属の分厚い扉があった。
薄暗い部屋の中は、宇宙船の撮影セットみたいだ。
その部屋の中央にMRIの機械があった。
台の上に仰向けに寝るように促された。
ヘッドレストがCTの装置とは比べ物にならないくらいしっかりしている。
頭とヘッドレストの隙間にクッションのようなものを詰め込まれて、頭が固定される。
そして、
「気分が悪くなったらこれを握ってください。音が出ますから。」
とゴムボールのようなものを左手に握らされた。
緊急時のブザーのようだ。
「目を瞑っていてくださいね。」
と言って、担当の男性が扉の外に出て扉を閉めた。
部屋の中にはクラシックの音楽が流れている。
それと、リズムボックスで打ち込んだドラムパターンのような音が聞こえる。
この音は何だ?
MRIが動き出した。 音もCTよりでかい。
MRIが検査を行っているときに出る音は、ウルトラセブンで宇宙船が飛んでいるシーンで使われるSEのようだった。
逆に何だか落ち着いた。
MRIで全身の検査を行う場合は40分くらいかかるみたいだけど、今回は頭の検査だけだったので10分ほどで終わった。
なんだかホッとした。

着替えて診察室のある建物に戻った。
10分ほどで名前を呼ばれた。
診察してくれた先生は、診察室の奥の部屋で急患の治療をしているようだった。
「あたまいがいにいたいところはありますかぁぁぁぁ?」
という先生のでかい声が聞こえる。
急患はかなり大変なことになっているのだろうか。。。
しばらくすると先生が診察室に戻ってきたようで、俺の前に待っていた患者さんの診察を始めた。
5分ほど待つと、俺の順番になって先生に名前を呼ばれた。
ライトボードには、MRIで撮影したフィルムが挟まれていた。
CTに比べると、MRIで撮影したフィルムは解像度が高くてとても鮮明だ。
そのMRIの検査結果を見ながら、先生はこう言った。
「結論から言っちゃうとですね。。。」
はい、どうなんでしょう?
「脳梗塞はありませんよ。大丈夫です!」
全身の力が抜けた。
よかった。仕事も普通にできるし、エマの散歩もちゃんと行くことができる。
毎日当たり前のようにやっていることが、とてもありがたいことのように思える。
いや、有難い事なんだ。
健康で生活していられることは、とても有難い事なんだ。
結果として、今の俺の病気は、【ストレスによる末梢性神経障害】ということがわかった。
この病気になる原因は、ウイルス性の場合、扇風機の風の直撃など、いろいろあるらしい。
知らず知らずのうちにストレスが積み重なってオーバーフローした結果、こういう症状となって現れたようだ。
薬で治るということなので、2週間分の薬を処方してもらった。
そして、2週間後にもう一度診察してもらうことになった。
今回は脳梗塞ではなかったけど、いい機会だったので脳の病気について先生にいろいろと聞いてみた。
忙しい中、先生はわかりやすく説明してくれた。
お礼を言って、診察室を出た。
今回お世話になった埼友病院さんはとても良い病院だった。
病気にならないのが一番良いけど、また何か起きたときにはお世話になろうと思う。

精算を済ませて、外に出た。
いつの間にか夕方になっていて、ほんの少しだけ涼しくなっていた。
かみさんに「大丈夫。脳梗塞じゃなかったよ。」とメールした。
このメールを見て、かみさんもホッとするだろう。
さぁ、早く帰ってエマの散歩だ!

2007年7月27日金曜日

義父の死

6月21日の深夜、3月から脳梗塞で入院していた義父が亡くなった。
享年72歳。死んでしまうには、まだちょっと早いと思う。
義父は一年半前からすい臓がんも患っていたので、もうどうにも手の施しようがなかった。
苦しむ父を見て、無理な延命は義父を更に苦しめるだけだった。
アクティブだった義父も、そんな状態で長く生きたいとは思っていなかっただろうと思う。

本当はもっといろいろ義父について書こうと思ったけど、止めました。
実は一度、経過や状況を細かく書いたのだけど、書いている途中で原因不明の半身麻痺が。。。(7月28日のブログ参照)
義父が「やめておけ。」と言っているようなので(笑)、止めておきます。
「正月にはエマにまでお年玉をくれるようなやさしい父でした。」とだけ書いておきます。

そんなこともあって、このブログもすっかり放置状態でした。
義父の四十九日が終わるまではまだまだ忙しいと思うけど、また徐々にいろいろ書いていこうと思います。


義父が亡くなって一ヶ月以上経過したけど、まだ義父がどこかにいるような気がします。
でも、家族の夢に出てくることもないようだから、安心して成仏してくれたのかな。。。